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指より細い、色鮮やかな幼体:良く見ると、緑、黄緑、ターコイズブルー、セラドン、白、茶色、黒など、さまざまな色が含まれている。
私たちとイグアナとの出会いは、まったく唐突に起こりました。それまでは熱帯魚、カメ、カエル等を飼っていた関係で、その手のショップにはよく出入りしていたのですが、そこに彼女はいたのです。
見事なまでに美しい体色、大きなつぶらな瞳、おとなしい性格、すべてが新鮮で衝撃的でした。その時、幼体のイグアナと目が合ってしまったのが始まりで、背中に戦慄が走り、その瞬間から、頭の中がイグアナでいっぱいになってしまったのは言うまでもありません。そうです、恋をしてしまったのです。
当時は、まだ、1匹3〜4万円していたこともあり、お金の面からも買う決断をするには勇気がいることでした。そして何よりも、はたして自分に飼えるだろうか、という疑問が強くありました。しかし、イグアナたちは見れば見るほど美しく、罪のない視線を投げかけて来ます。心がぐらぐらと揺さぶられます。「買ってしまえ!」と天の声が聞こえるような気がする一方、「お前はイグアナのことは何も知らないではないか!」と理性が警告します。だれしも新しく生き物を飼おうというときは、このような戦いが頭の中で繰り広げられることでしょう。
何度もショップに通い、温室の前にかじりついて、迷っては帰ることを繰り返しているうちに、見かねたショップの人が声をかけてくれました。「1匹尾の切れた個体がいるけど、それなら半額でいいよ」と。それが私たちと最初のイグアナとの運命の出会いでした。
今考えると、それはかなり無謀な決断だったと思います。とにかく、私たち自身、イグアナに関する知識は無に等しく、飼育のために何が必要だとか、どのくらいの大きさになるのかさえはっきりと認識しないまま買ってしまったのです。もし現在、そういう買い方をしようとしている人を見かけたら、今の私なら間違いなく忠告するでしょう。
何はともあれ、こうしてわが家に新しく天使のようなイグアナの幼体が来たのです。この最初のイグアナが非常に良い個体で、尾の切断事故を経験しているにもかかわらず、初めから人に良く馴れ、手の中で眠ってしまうほどでした。幼少のころから爬虫類と接する機会は多くありましたが、どちらかと言うと爬虫類は「人を見ると逃げる」というイメージが強い生き物です。
ところが、この美しい緑色のトカゲは自ら人間に寄って来たり、頭に上って落ち着いてしまったりするのです。 古い爬虫類のイメージは崩壊しました。かわりに、正しく接していれば、たとえ人間とイグアナでも互いに信頼でき、分かり合えるようになると確信したのです。とにかく自分にできる限りのことをしてやろうと決意しました。
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イグアナの洋書:イグアナ先進国アメリカでは、数十冊のイグアナ飼育書が発売されている。
まず最初に最も欲しかったのは情報です。書店を探し回りましたが、イグアナに関する飼育書は一冊も見つかりませんでした。ところが、ある書店でイグアナ飼育に関する洋書を見つけ、海外にはその手の本が多数存在していることが分かってきました。まずは洋書との格闘です。
そのためにFAXを買い、海外の書店で扱っているイグアナに関する文献や爬虫類の病気に関する本を、すべて注文して取り寄せました。これらの本を読んで、飼育に関するノウハウもさることながら、諸外国の人々のペットに対する考え、取り組み方に深く感銘を受けました。
爬虫類であろうと熱帯魚であろうと、先進諸国の人々は、単に「ペット」ではなく、共に生活をする「コンパニオンアニマル」として、それらの生き物と接しています。人間が一方的に動物を飼うのではなく、動物とどのようにして共存するかを真剣に考えているのです。特にイグアナのような大型の爬虫類の場合、この様な考えで飼育して行かないと壁にぶつかるであろうとその時、はっきりとわかりました。
「これは生半可な気持ちで飼育できるものではない!」というのが本を読んだときの正直な感想です。
・温室(W80×D40×H150) 2.5万円
・ヒーター・サーモスタット 1.5万円
・照明器具(TRUE-LITE 、スポット) 1.5万円
・温度計・その他レイアウトグッズ 1.0万円
6.5万円
表1.1:イグアナを飼育するにあたってぜひ揃えていただきたいもの
まず、お金がかかります。初期費用として表1.1に示した程度の予算(費用は概算)が必要となってきます。
たとえイグアナ自体の値段が数千円であったとしても、正しく飼育するためには、表に書いたくらいの設備を最低限揃える必要があります。
次に、イグアナを飼い続けていく上での必要なお金が問題となってきます。主なものは電気代と餌代です。しかし、初めの数年、温室飼育している間の電気代はさほど気になるほどではないでしょう。
餌は、毎日、数種類のものを与えるとすると1日平均して200〜300円はかかるはずです。そうすると餌代として、1匹当り月々5000円〜1万円はみておく必要があるでしょう。
・電気代 4〜5万円/月 放し飼いでエアコン連続運転
・餌代 5〜6万円/月 14匹合計
表1.2:イグアナ(成体)を放し飼いにした場合のランニングコスト
数年して成体になり、放し飼いにするとさらに大変になってきます。特殊な例かも知れませんが、冬場わが家の成体イグアナ14匹にかかる費用は、電気代と餌代だけで表1.2くらいかかります。単独飼育で、もっと工夫をすればこれほどお金をかけなくても飼育できると思いますが、ある程度は覚悟していただいた方が良いでしょう。電気代は、イグアナを飼った後の電気代から飼う前の電気代を引いたおおよその額です。この数値は地域による気温差や部屋の大きさ、熱源の種類や断熱効率などによって増減するでしょう。もちろん夏場はぐっと少なくなりますが、タダになる訳ではありません。
さらに、器具の保守点検費、定期的に買うビタミン剤や病気になった時の治療費まで含めると、その額は相当なものになってしまいます。しかし、これらは、イグアナを飼うと決めた以上は必要となる経費なのです。もちろん私たちは、これだけの費用をイグアナにかける価値は十分にあると思っています。
イグアナ自体の値段は、小学生でもおこづかいで買えるほどになりました。けれども、本当に飼育するためには、ご両親にかなり理解してもらわないと飼育が困難であることが理解していただけると思います。水槽で満足な温度管理もされず、レタスだけで育てられているイグアナは、ただ死を待つだけになってしまうのです。
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手のひらに乗る幼体のイグアナ。SVL7cm 、体重約30g
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抱えるのも大変な成体のイグアナ。SVL40cm 、体重約4kg
幼体のころは、1日のうちで何度も食べたり排泄したりするので、飼う人の時間も制約を受けます。だれかがいつも家にいる場合は良いのですが、一人暮しの人がイグアナを飼うのは、結構大変でしょう。朝、早起きをしてイグアナに餌を与えたり、温室の掃除をする時間を設けなければならないかもしれません。わが家の場合は、14匹のイグアナの世話で、午前中はほとんどつぶれてしまいます。
イグアナが大きくなることも前もって十分に知っておいた方がよいでしょう。ふつう、ショップでは、幼体のイグアナしか売っていないので、買う前に成体のイグアナを見る人は少ないと思います。しかし、イグアナは成長すると、幼体からは想像できないほど大きくなります。
SVL10cm程度の幼体が、SVL40〜50cmの成体になると表現しても、あまり驚かないかもしれませんが、例えば長さが5倍になったとすると、彼らはほぼ相似形に成長するので、体積的には5×5×5=125倍にもなるのです。40〜50gの幼体が、数年で4000〜5000gに達してしまいます。手の平に乗る指より細いイグアナを見ていても、なかなか想像できないでしょう。しかしこれが事実なのです。
従って、買う前に、これから自分がイグアナを飼おうと準備している飼育環境が、数年後にSVL40〜50cm、全長1.5〜2m、体重3〜5kgにもなる成体のイグアナを飼うのに適当かどうか、十分に検討する必要があります。「大きくなったからいらない」と言ってその辺に捨てるような悲惨なことだけは絶対に避けなければなりません。
「小さくて、安くて、飼育が簡単なイグアナ」という考えは今すぐ捨てて下さい。「大きくなって、費用もかかり、飼育が大変なイグアナ」であると認識していただいた方が、より現実に近いでしょう。
しかしながら、時間も費用もかかり、大型になることも納得した上で買った人は、この上なくイグアナを愛することができると思います。そういう人にとっては、イグアナは最高の友、仲間となることができます。会社を休んでイグアナを病院に連れて行ったり、自分たちの食費を削ってイグアナたちのために栄養価の高い野菜を買うことは、少しも不思議なことではありません。イグアナを中心に生活のペースを作っているといっても過言ではない生活がはじまるでしょう。それほど彼らは魅力的なのです。
イグアナを飼いはじめて、最初に驚くのは、彼らの頭の良さだと思います。昔から爬虫類は脳が小さいと言われ続けていますが、脳の大きさと知能は必ずしも比例しません。まず第一に「人に馴れる」ということが素晴らしいことです。少なくとも、彼らは私たちを危険のない生き物だと認識してくれたことになります。その他にも、襖を開けたり、トイレをの場所を覚えたりと、かなりの知的な行動をとります。だからこそ「共に暮らす」ということが可能になるのです。
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冷蔵庫の上の卓上コンロで安心して眠るイグアナ。どんな夢を見ているのだろう。
イグアナの魅力にとりつかれた人にとっては、大型になることも、やっかいな問題どころか大変喜ばしいこととなります。大きく成長することは健康な証拠ですから、われわれがイグアナに真心こめて取り組むほど、どんどん大きくなるでしょう。定期的にSVLを測定したり、体重を測定するのが楽しみになって来ます。
1m以上のイグアナが、気持ち良さそうにテレビや冷蔵庫の上で寝ている姿を見ると、最高の幸せを感じてしまうのは私たちだけではないはずです。